ウッドショックとは?新築住宅を建てるときの注意点
新型コロナウイルスがもたらした木材価格の高騰「ウッドショック」。一体私たちの生活にどのように影響してくるのでしょうか。特にこれから新築住宅を建てたいと計画している方は、頭に入れておいて損はないですよ。
ウッドショックとは?
ウッドショックとはコロナの影響で起きた、住宅業界における輸入木材価格の高騰のことを言います。日本で使われる木材の7割弱は輸入に頼っている状態。北米などで木材の需要が高まったことから、日本の住宅業界にも影響を及ぼしています。
こちらは日本における丸太と製材の価格推移です。2015年の価格を100としたときの、2021年5月までの価格の上下を示しています。
輸入価格が上昇しているのがわかりますよね。それに追随するように、国内の丸太や製材価格も上昇しています。
新型コロナウイルス流行とウッドショックの関係
ではなぜ新型コロナウイルス感染症拡大が木材価格に影響するのでしょうか?
新型コロナは、さまざまな業界に影響をおよぼしました。たとえば劇場や宿泊業、飲食業など、大きく業績が落ち込んだ企業も少なくありません。
その一方で、コロナ禍で逆に需要が増加した業種もあります。そのうちの一つが、新築戸建住宅売買業。コロナの影響で一時期は住宅建設も落ち込みましたが、リモートワークで自宅にこもる生活スタイルが普及したことにより、郊外へ住宅を新しく購入したり、リフォームをしたりと、住環境をととのえる方が増えてきました。
特に北米ではこの流れが顕著で、住宅を新しく建てる方が増加。それと同時に多くの木材を輸入している中国でも、新型コロナを早期に抑え込んで、木材の需要が回復しました。その結果、世界的に木材の価格が高騰。日本でも安価な輸入材が調達しにくくなりました。
国産材への切り替えは難しい
輸入材が高騰しているなら、国産材に切り替えれば良いのでは?そう思われる方もいらっしゃるでしょう。たしかに日本は森林面積も大きい国ですが、国産材への切り替えはなかなか難しいのだといいます。
今の住宅設計が輸入材の強度をもとに計算されていると、国産材へ切り替えるときには新たな設計や構造計算が必要です。設計費用を考えると、国産材への切り替えでコストが安くなるとは限りません。
また木材というのは、急に供給量を増やせるものではないという理由もあります。今から急いで梁として使える木材を植えたとしても、成長するまでには30~40年かかるのです。
今後ウッドショックが収まれば、また価格の安い輸入材に負けてしまう可能性が高いと考えられます。ウッドショックのような一時的な価格高騰に振り回されず、今までどおりの供給を続けたいという木材生産者が多いでしょう。
ウッドショックの新築住宅への影響
これから新築住宅を建てたいという方にとって、ウッドショックはどのような影響を及ぼすのでしょうか。
国産材メーカーへの影響は少ない
住宅メーカーのなかには、国産材にこだわって使っている会社も。ウッドショックで高騰しているのは主に輸入材なので、国産材を使った住宅メーカーにとっては影響は少ないでしょう。
一方、比較的影響が大きいとされているのは、安い輸入材を使ってきたローコスト住宅や建売住宅のメーカーです。極端な高騰はないといわれていますが、もしかすると建設費の値上げを求められることがあるかもしれません。
どのくらい材料費が高騰するか
木材の価格が高騰するということは、新築住宅を建てるための材料費が今までよりも高くなるということ。ただし木造戸建住宅の建築費は、工事費用の比率が高いことから、材料費の高騰はそこまで大きな影響ではないといわれています。
具体的には本体工事費の35~50%が木工事、そのうち1/4~1/2が木材費。つまり本体工事費の10~20%が木材費です。仮に本体工事費が1,500万円だとすると、木材費は150~200万円程度。木材価格が1.2倍になったとしても、30~40万円の差です。金額としては、そう心配するほどのことでもないかもしれません。
梁に用いる木材の供給不足
特にウッドショックによる供給不足や価格高騰に陥りやすいといわれているのが、住宅の梁に用いる部材です。
梁に適した木材としてよく使われているのが、ベイマツやレッドウッドなど。輸入材の占める割合が多いので、ウッドショックの影響を受けやすいのです。構造計算にも関係するため、他の部材で代用するのもなかなか難しく、住宅価格に影響を及ぼす可能性があります。
一方、柱は国内でも調達しやすいスギやヒノキがよく使われるため、ウッドショックの影響は比較的少ないとされています。
工事の中断や遅延が深刻
現在住宅を建築中の方は、ウッドショックの影響はあまり心配しなくても良いと考えられます。しかしこれから新築住宅やリフォームを契約するという方は、木材の供給不足による工事の中断や遅延が心配です。
今、賃貸に住んでいるのであれば、引っ越しが送れて出費が増えるかもしれません。リフォームで仮住まいが必要な方であれば、工事が遅れれば遅れるほど仮住まいの家賃がかかってきます。万が一工事が遅れてしまった際にトラブルにならないよう、契約書の内容についてはよく考えたほうが良いでしょう。